トーマス・ルフ展@東京国立近代美術館について 選び手としてのトーマス・ルフ
給水塔の作品でも有名なベッヒァー派の写真家
トーマス・ルフのデビューから現在までの流れを一望できる展示
美術大学での学んだ写真家としてデビューしてから
写真を撮らない写真家となっていく流れがわかりやすく一覧できて、楽しい
彼の作品は古びない。
今見ても2010年の作品のように見える。
その理由は、作品がもつテクノのような
無感情で、無機質な特性だろう。
そこには思い出は刻まれていない。
事実が佇んでいる。
彼はどんな写真を撮るかで悩まない。
その代り
写真とはそもそもなんだということを考え続ける。
フィルムからデジタルデータに写真を構成する裏側が変わるのであれば
フィルムの裏側であるネガ自体を作品にする。
デジタルの裏側であるデータそのものをも作品にする。
そして美しい作品を作るためなら他の人のデータを
使うのもためらわない。
コンセプトはがオリジナルであれば素材は
オリジナルでなくても気にも留めないのだ。
それは近年のことではなく
彼のデビューまもないころの作品からそうだと
この展示では明らかにされる。
彼は、写真を世界中の過去から現在までの写真を見つめ
その中から自分にとって必要な写真をパーツとして集めDJやキュレーターのように
作品にする。
彼の宇宙への傾倒、愛は有名だが
もちろんNASAや各種衛星から提供される
素材は彼の作品にはなくてはならないものとなっている。
ルフの作品について考えることで
写真自体へ想いがわたる
そんな広がりのある素晴らしい展示だった。